杉本会計事務所

代表コラム
DIRECTOR
COLUMN

2022.10.31
Contributor:motoki

ゾンビ企業からの脱却

今年も残すところ2ヵ月。本当に1年経つのは早いですね。この時期は個人も企業も、年末の節目をどのように迎えるかが当面のテーマでしょうか。

既にコロナ禍3度目の年越しとなりますが、中小企業の喫緊の課題は、昨年3月までに調達した実質無利子・無担保のコロナ融資(ゼロゼロ融資)の返済が、年明け以降本格化することとでしょう。

このコロナ融資を受けた中小企業の現状の財務状況は、3つのパターンに分かれると思われます。

①念のため先行きに備えた借入のため、約定どおり返済
②コロナ禍の苦境資金に充当し、その後の業績改善の中で約定どおり返済
③コロナ禍の苦境資金に充当したが、業績不振のままで今後の返済が困難

③には、既存の借入にコロナ融資が上乗せされて財務状況が悪化し、実質債務超過の状態が継続している企業が含まれており、こうした企業は不名誉な名称=ゾンビ企業とも呼ばれ、コロナ融資の返済に直面し改めてクローズアップされています。

金融機関からも「コロナ融資の返済時期を迎え、コロナ禍以降を乗り越えて来た企業と低迷のままの企業に2極化しており、低迷企業の中には、金融機関が追加融資やリスケ(返済条件の変更等)の要請を受けられないところが出てくる」といった声が聞かれます。

コロナ禍以降、今年に入ってからの経済情勢(ウクライナ情勢・物価高・円安等)をも乗り越えて来た企業は、低迷企業とどこが違うのでしょうか?

財務管理の視点からのその違いは、以下の点が挙げられると考えます。

・業績(売上・利益)をセグメント別(部門・店舗・商品等)に把握している
・外部要因(コロナ禍・円安・物価高等)による業績への影響を数値で把握している
・上記二つの把握は翌月上旬までの月次決算で行っている
・月次決算の予算比・前期比の分析により施策の確認・修正を行っている
・施策は社長・幹部から現場に落とし込まれ実行されている
・今期のリアルな損益着地見込みを予測している
・月次で資金繰り実績と(少なくとも)半年先の資金繰り予定を把握している

上記項目が、業績好調企業における財務管理の網羅的要件ということではありませんが、これまでの会計事務所としての経験上、長期にわたり業績を維持している企業では、ほぼ実践されている共通項ではないかと考えています。

一方で、実質債務超過の状態が継続している企業(ゾンビ企業)となるのは、上記項目の実践及び修正のサイクルが回っておらず、事態を打開する有効な経営的打ち手が見い出せない企業が該当します。

しかしながら、コロナ融資の返済開始と共に資金供給が滞れば、これまでのように存続することが困難になってしまいます。

そうした企業は、まず上記項目の実践が必要ですが、それでも業績改善が見込めない場合には、出口戦略(会社売却・事業譲渡・会社清算等)についても検討すべきではないでしょうか。

実際のクライアント事例でも、様々な施策を講じても業績不振が続いた企業が、一縷の望みをかけてコンタクトしたM&A仲介業者を介し会社売却に漕ぎ着け、存続しているケースがあります。

社内に固定化した人的・物的リソースの有効活用が、自助努力だけでは困難な場合でも、他社と結びつくこと・外部に開放することで、可能になることはあるのです。

出口戦略は、その意味で決してネガティブではなく、前向きな方向性として捉えるべきであると考えます。

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