杉本会計事務所

代表コラム
DIRECTOR
COLUMN

2022.05.31
Contributor:motoki

予実管理の仕組み化

3月決算クライアントの多くは本日(5月末日)税務申告まで完了し、会計事務所としては一区切りとなりました。一息付きたいところではあります。

当のクライアントの方は新年度がスタートして早2ヵ月。月次決算が進む中で、当初から業績が厳しい企業が、残念ながら少なくありません。

これは3月決算会社に限らず、円安・資源高・調達コストアップ・ウクライナ情勢等々、経営環境の激しい変化により、多くの企業で経営状況の悪化がみられます。

特にコロナ融資を受けている中小企業等は、近づく返済時期に向けて、金融機関から事業計画の作成及び予実管理が求められていますが、こちらも十分に機能していないケースが多いようです。

ここで予実管理とは、事業計画を数値予算に落とし込み、実績数値と比較しその差異を分析し、計画達成に必要な措置を講じること。基本は月次ベースで行います。

この予実管理の機能不全の要因には、上記のような事業計画の作成段階で想定できなかった経営環境の変化も含まれますが、そもそも論として以下のようなが理由が挙げられます。

・予算が具体的業務(KPI)の積上げになっていない
・予算が単に前期比何%増(減)で作成されている
・マネジメントのコミットが希薄
・予算必達の意識レベルが低い
・実績数値が適時・正確に集計されない
・差異内容が分析できない
・差異内容の分析止まりで措置が講じられない
・講じた措置の結果が検証されない

特に「予算必達の意識レベルが低い」という点に関して、資金調達を借入金に依存する中小企業においては、予算上の必達利益は借入返済額を基準にmustの金額として設定されます。

これが未達となれば、資金状況がひっ迫する事態にもなりかねません。

上記各項目は、相互に関連したり複合的だったりしますが、要すれば、適正な経営の舵取りを可能とする予実管理が仕組み化されていない、ということになります。

最近は、経営環境や過去データを客観的に分析した予測数値(フォーキャスト)を取り込み、予算をタイムリーに変更して行く手法(ローリングフォーキャスト)なども、予実管理の精度向上策として着目されています。

DXの一環として、こうしたツールの導入も進みつつありますが、まずもって実践すべきは、上記にそもそも論として掲げた、予実管理機能不全の要因解消です。

激しい環境変化を理由に予実管理など無理」と諦めずに、むしろそうした状況だからこそ、借入返済財源となる必達利益を確保し、適正な業績管理を行うために、制度としての予実管理の仕組み化に、是非取り組んで頂ければと考えています。

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