杉本会計事務所

代表コラム
DIRECTOR
COLUMN

2021.03.31
Contributor:motoki

ファイナンス思考

我々士業は(当然ながら)資格を取って終わりではなく、業務品質を維持すべく日々研鑽が必要であり、会計士・税理士いずれも、年間研修義務が定められています。

私も年度末の今日までに、どうにか両資格の必要単位をクリアしました。

会計士の方の最近の研修では、よりファイナンスを重視する傾向にあり、そのファイナンスの基本的考え方を、会計との相違も含めて「ざっくり」整理してみました。

まず、会計は「利益」を取り扱うのに対し、ファイナンスは「キャッシュ」を取り扱います。

会計は一つの事実に対し複数処理を許容するため、利益が相対的な「意見」とされるのに対し、キャッシュはリアルな残高すなわち「事実」とされ、ファイナンスはこのキャッシュに着目します。

また、会計は「過去」の業績、ファイナンスは「将来」キャッシュフロー(CF)を取り扱うため、「時間軸」が異なります。

さらに、ファイナンスではキャッシュの「時間価値」を考慮し、同じ1万円でも1年後より現在の方が価値が高いと考えます。

時間価値は将来CF見込額を「現在割引価値」として算定し、その割引率として、調達資金の区分(負債・資本)ごとに、利息や配当等の「期待収益率」を適用します。

そして資本の期待収益率は、CAPM(キャップエム)等の算式で計算され、これを元にWACC(ワック)と呼ばれる資本コスト(資金調達コスト)が算定されます。

ここまで来るとかなりややこしくなりますね! しかしながら。。。

事実であるキャッシュを扱い、上記のような算式や横文字(カタカナ)が飛び交うファイナンスは、いかにも厳格な理論に思えますが、将来CFや割引率があくまで想定値であるが故に、実務的にはかなり適当な面があるのも事実かと思います(笑)。

そんなファイナンスの主要機能は、投資・資金調達・成果配分の3つ意思決定に資することであり、その目的は(売上や利益ではなく)企業価値の最大化にあります。

以上がファイナンスの基本的考え方です。

その根底には、企業活動を投資として捉え、何に投資するかを決め、資金調達コストを抑えて投資収益を上げ、増分キャッシュを利息や配当等で投資家に配分するという欧米型の発想があります。

日本の上場株式売買高の6割以上が海外投資家とされる昨今、ファイナンスがより重視される(我々も研修を求められる)のは必然かも知れません。

こうしたファイナンスの考え方は、売上や営業利益(率)等を主体で考えるPL重視の経営から、ROIC(投下資本利益率)やEBITDA(償却・利払・税引前利益)のように、BSやCFを含めて考える経営に繋がります。

企業経営を投資活動と捉えるのは味気ない気もしますが、資金は足りているのか、効率よく回っているのか、調達は適切か等々、BS及びCFを重視する考え方=ファイナンス思考は、どの企業にも必要な視点・考え方であると言えます。

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