杉本会計事務所

代表コラム
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2019.12.30
Contributor:motoki

故中村哲医師の遺訓

今年ももうすぐ終わり。年を追うごとに1年がより速く過ぎ行くように感じます。これは1年を年齢で割った値が年々小さくなり、年長者ほど主観的な年月の長さを短く感じるから(ジャネーの法則)だとか。

特に今年は仕事の重なりで12月があっという間でしたが、その繁忙の中で胸に深く刻まれたのが、アフガニスタンで銃撃により亡くなられた故中村哲医師の遺訓です。

それは、葬儀で挨拶されたご長男の次の言葉に集約されています。

「父から学んだことは、家族はもちろん人の思いを大切にすること、物事において本当に必要なことを見極めること、そして必要なことは一生懸命行うということです」

中村医師はアフガニスタンで30年以上の長きに亘り、言葉どおりのことを実践されて来ました。

現地の多民族の人々の「思い(望み)」は互いが戦うことではなく、農業を基盤とした自給自足の平和な暮らしにあるとし、諸外国の軍事介入による紛争解決に反対の立場を貫かれました。

医療支援に赴いた現地で、まず求められるのは医療よりも水と食料(百の診療所より一本の用水路)であること、すなわち灌漑事業の必要性を認識されます。

紛争地域等の医療不足に対して、医療支援を行う。これは一見正しい対応ですが、こうしたコインの裏返し的発想(flip the coin)が、本質的な問題の発見と解決に至らないことは往々にしてあることです。中村医師は「物事において本当に必要なこと」を見極められました。

ここで普通の医師なら役回りが異なるため撤収止むなしですが、中村医師は違いました。専門外の土木建設の知識を習得し、現地で陣頭指揮を執り、蛇篭など日本の技術も利用し用水路を敷設。農村と農業の復活に貢献しました。正に「必要なことは一生懸命行うこと」を実践されたのです。

中村医師のような日本人が居られたことに感動し、そして誇りに思います。深く敬意を表し、心からご冥福をお祈りします。

今年も、令和新時代の始まり、デジタル変革の進展、人手不足の深刻化、消費税増税、甚大な台風被害など、社会的にも経済的にもインパクトの大きい出来事が数多くありました。そして来年以降、変化のスピードはますます速く(1年がまた短く)なりそうです。

中村医師の遺訓を自分事として受け止め、変化の激しい中でも、周囲への配慮を忘れず、本質を見失うことなく、やるべきことを見極め実践して行きたいと思います。

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