杉本会計事務所

代表コラム
DIRECTOR
COLUMN

2022.04.30
Contributor:motoki

決算時はB/Sの吟味を忘れずに

年間を通して、3月は12月と並んで法人決算が集中します。当事務所も、ゴールデンウイーク前の4月後半から5月に掛けて、3月決算法人の詰めの作業を会社担当者と共に進めています。

決算が集中するこの時期ゆえに感じるのですが、中小企業において、決算が早くまとまる企業と申告期限ギリギリになる企業に差が生じる主要因の一つは、B/S(バランスシート)項目の管理精度にあると考えています。

決算の観点から、B/S項目の基本的確認事項を整理すると、下記のとおりになります。

・資金項目の確定(現預金・借入金を実残・通帳・残高証明等と照合)
・営業債権の確定(受手・売掛の管理帳票残高と照合)
・仕入債務の確定(支手・買掛の管理帳票残高と照合)
・在庫の確定(在庫受払帳票・実地棚卸記録と照合)
・減価償却資産の確定(固定資産台帳・減価償却資料と照合)
・その他資産及び負債の確定(科目別に実残・管理帳票残高等と照合)

最初に残高確定すべき資金項目について、預金・借入金は銀行残高と一致する(させる)にしても、現金の実際の入出金及び残高が出納帳や会計帳簿と合わないケースがあります。

その他の項目についても、B/S項目の管理が不十分な場合は、次のような問題点が見受けられます。

営業債権・債務のうち売掛金や買掛金について、管理帳票(システム)における計上・消込(入出金)・残高が、会計帳簿に反映していない。長期滞留(未精算)残高が存在する。

在庫(棚卸資産)について、受払(システム)管理がなく、年一の期末実地棚卸のみで残高把握している。現物管理が十分でなく架空在庫・不良在庫・滞留在庫等が存在する。

減価償却資産について、台帳・償却資料残高が会計帳簿と一致しない。現物管理が十分でなく不明資産・不要資産が存在する。

その他資産及び負債について、勘定別の残高内訳資料が存在しない。内容不明残高が存在する。実在性・網羅性が検証できない。

ストックとしてのB/S項目は、年度決算時に実残高を確定すべきですが、上記のような問題点の中には、決算作業の中で処理判断できない(解明できない)ために、翌期繰越が継続されて行くケースも少なくありません。

また期中に月次決算を行っている企業でも、経営管理上はフローの損益及び資金繰りの分析が主体となり、B/S項目の内容検討が十分行われていないように思います。

しかしながら、期中の損益も資金繰りも、本来B/S項目の正確性なしに適正な把握はできません。

そこで少なくとも決算に際しては、B/Sについて、以下の点を常に認識する必要があると考えます。

・資金項目=現預金及び借入金は実残高で確定
・損益結果=当期純損益=自己資本増減
・自己資本増減は資金項目以外のB/S項目の正確性に依存

毎期の事業活動を反映するフローとしての損益(売上・原価・経費)はその期で消え去り、その結果としての当期純損益のみがB/Sの自己資本増減に取り込まれ引き継がれます。B/Sが継続する事業経営の連結環と言われるゆえんです。

B/S項目の管理が十分でない企業は、B/Sの重要性を改めて確認し、管理精度の向上に取り組んで頂ければと思います。

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