杉本会計事務所

代表コラム
DIRECTOR
COLUMN

2021.12.31
Contributor:motoki

忘却の力

毎年クライアントのご厚意で、会員施設の人間ドックに行かせて頂いております。今年は秋口以降予約が満杯で、12月半ばの検査となりました。山中湖近くの施設に前泊し翌朝から夕方まで検査を行い、最後にドクターの総評を伺う形となっています。

私は朝の運動がルーチンなので、防寒ウエアを持参し検査当日早朝に湖周辺を2時間ほどウォーキングしたのですが、気温零度のかなりの寒さで人影もまばら(当然です)。これはその後の検査に影響するかも知れない、と少し気にしていました。

CT・MRI・PET・エコー等々全身に様々な検査を行いデータも詳細に出るのですが、果たして結果は、昨年とほぼ同じ微細な血管プラークの指摘等があった程度。再検査の必要もなく、今年もホッとしました。

それでも昨年の総評ドクターは「加齢と共に適切な生活習慣と定期検査を励行して下さい」と慎重姿勢だったのに対して、今年のドクターは「いい結果で年齢的に全く心配ないです」と前向きコメントで、気持ちがより楽に。

そのドクターから健康上気になる点を聞かれ、「最近物忘れが増えて」と告げたところ、「忘れることは能力です。全部覚えていたら大変でしょ?脳検査の結果も全然問題ないですよ」と、ここでも至ってポジティブなお言葉を頂いた次第です。

忘れることは能力。そう捉えることは確かに必要な気がします。

年を追うごとに受け入れる情報や事象はどんどん増え、経験も積み上がって行く中で、全てを記憶したり思考対象とすることは出来ません。むしろ忘れる(取り除く)ことが重要になります。

それは記憶や思考もリリースポイント(手放すタイミング判断)が大切ということ。

しっかり受け止め記憶に留めるべきことを安易に受け流し忘れてしまう(リリースが早過ぎる)のも問題ですが、意義の乏しい情報やネガティブな経験等を溜め込んだり引きずったりして次に進めない(リリースが遅すぎる)のも成長の妨げになります。

そうしたことを防ぐために、意識して記憶に留めたり忘れたりすることを「選択的忘却」といい、これは記憶を操作するのではなく、入手する情報より捨てる情報を取捨選択する考え方です。

情報過多の時代、情報は誰もが格差なく大量に入手できるので、入り口で情報を選別するより、出口で情報をいかに捨て去るか(忘れ去るか)に個人の価値判断や個性が反映し、そこにオリジナリティや差別化が生まれる可能性が出て来ます。

これまでずっと、ものごとをより多く記憶することが能力の高さで、記憶力が弱いことや忘れることは、能力が低いとか老化現象の現れとかネガティブに捉えられて来ましたが、ITの進歩とその活用等により、自分の頭に情報を蓄え取り出すこと(記憶力)の優位性は低下する方向にあります。

人間ドックでのドクターとの会話は、私の単なる物忘れとそれに対する励ましだったと思いますが(笑)、忘れることは必ずしも悪いことばかりではなく、情報を整理したり、新たな発想をしたり、前向きに生きるための力=忘却の力として捉え直す気付きになりました。

新年も、単なる物忘れには注意しつつ、学びは怠らず、一歩ずつ進んで行きたいと思います。

New Column

Director Column

View More

Staff Column

View More