杉本会計事務所

代表コラム
DIRECTOR
COLUMN

2018.11.18
Contributor:motoki

フェルメール 描かれた女性3人の視線

上野の森美術館で開催されているフェルメール展に行ってきました。

フェルメール展
https://www.vermeer.jp/
https://ja.wikipedia.org/wiki/真珠の耳飾りの少女

日時指定入場制のため待ち時間は比較的短時間でしたが、やはり非常に人気が高く館内はけっこうな混み具合い。今回の注目は「牛乳を注ぐ女」のようですが、個人的には「手紙を書く女」と初来日の「赤い帽子の娘」が印象に残りました。それは、今回は展示のない代表作「真珠の耳飾りの少女」も合わせて比べた時の彼女たちの視線の違いに興味を感じたからです。

「真珠の耳飾りの少女」は背景も単調で彼女以外には何も描かれず、不特定の人物(トローニー)としてフェルメールが理想の女性を描いたとも言われる作品。少女は見られていることをしっかり受け止めていて、落ち着いた視線に見えます。自分の美しさを自覚しているような凛々しさも感じます。

それに対して「手紙を書く女」の女性は、こちらを見て微笑んではいますが、その手紙が恋文だからなのか、少し気恥ずかしさと戸惑いを感じさせる視線に映りました。他の作品にも登場する肌触りのよさそうな毛皮の付いた黄色のガウンと、きらりと光る髪飾りが手紙の相手への気持ちを表しているのでしょうか?

また「赤い帽子の娘」の女性は、見るからに性格がはっきりしていそうで、不意に見られてちょっとした抵抗感を感じている視線にも見えます。鮮やかな赤色と自己主張を感じる形の帽子、そしてフェルメールには珍しい右からの光と背景のエキゾチックな装飾は、彼女が個性的であることの象徴かも知れません。

瞳の輝き、唇の艶やかさ、耳飾りのきらめき、そして作品全体に広がるフェルメールらしい光と影の繊細さは共通していて、すぐさま引き込まれてしまいます。

その一方で、3人の女性の心持ちの違いは、視線の違い、そして表情の違いにそれとなく表れているように感じます。その真意はわかりませんが、それぞれがどんな人で、どんな状況にあって、どんな思いでこちらを見ているのか・・・想像がふんわりとふくらみました。それは独りよがりな想像でしたが、ちょっとした心地よい思索の時間が過ごせたように思います。

日々数字を扱う仕事をしていると、心の中もカチッと固まってしまいそうになりますが、たまには絵画鑑賞などでそれを柔らかく解きほぐすことも大切だなぁ、と改めて感じることができました。
上野まで足を延ばしてよかったと思っています。

New Column

Director Column

View More

Staff Column

View More