杉本会計事務所

代表コラム
DIRECTOR
COLUMN

2022.03.31
Contributor:motoki

今改めて「値決め」を考える

桜が見頃の時期に入り日々春らしさを感じていますが、長期化するコロナ感染にウクライナ情勢が加わり、経済的にも先が見通しにくい状況になっています。

その中で昨年後半より継続して事業経営を圧迫しているのが、調達サイドの商品・サービスの大幅なコストアップ。

調達コストを下げられるのか、売価に上乗せできるのか。特に中小企業においては、これは非常に悩ましい問題です。

主要な調達先や販売先が大手企業であることも多く、調達コストは交渉の余地なく一方的に上がり、売価は競合他社等を意識して値上げ要請を躊躇してしまう。

そして「良いものを、より安く」という根強い価値観に縛られ、自助努力で何とかコストアップを吸収しようとしてしまう。

こうした状況が多いと思います。

ここでの主要課題は、値決め(プライシング)。「値決めは経営」とも言われますが、その基本的考え方として次の2つがあります。

①売価 → コスト+利益
②売価 → 顧客が支払ってもいいと思う金額(WTP:Willingness To Pay)

①は必要コストに必要利益を上乗せし売価を設定する考え方(コスト・プライシング)
②は顧客提供価値の対価として売価が決まるとする考え方(バリュー・プライシング)

供給過多で商品の差別化が難しく、顧客が多くの選択肢を持つ状況では、単に「調達コストが上がったので売価を上げさせて下さい」というコスト・プライシングは、簡単には通用しません。

調達コストアップを吸収し、必要利益を確保するためには、顧客提供価値を高め、「顧客が支払ってもいいと思う金額」をアップさせるバリュー・プライシングが求められます。

では、顧客提供価値をどう高めるのか。

これを、イノベーションによる新たな価値創造などと大上段に構えず、こと中小企業においては、下記のようなベーシック・アプローチでも、顧客提供価値アップの可能性が広がると思います。

・顧客接点を増やし、コミュニケーション頻度を上げる
・顧客をよく観察し、要望や困りごとに着目する
・要望や困りごとに対応すべく、提供商品・サービスを組み合わせる
・自社で対応不可の場合、対応可能な他者につなげる
・ビフォアサービスやアフターフォローを充実させる
・顧客対応スピードを上げる

上記は、売上・利益において実際に成果を上げているクライアントの実践事例も含め、その基本所作をピックアップし、まとめたものです。

ポイントは、顧客視点に立つ・あまりコストを掛けない・人的要素中心・機能価値より感性価値、といった点でしょうか。

「値決めは経営」の値決めとは、単に売価を上げる手法ではなく、いかに自社の製品・サービスの総合的な価値を高めて相応の売価を設定するか、という命題。

基本姿勢は「良いものを、より安く」ではなく「良いものを、相応に高い価格で」。

残念ながら、日本企業とくに中小企業は、価格交渉が苦手な企業が多く、現状の価格が「相応に高い価格」より低くても、売価をアップすることができない場合が多いようです。

自社の商品・サービスの提供価値を客観的に評価し、「顧客が支払ってもいいと思う金額」の「上限」まで、自信を持って売価アップ交渉を実践し、調達コストの上昇にめげずに取り組んで行きたいものです。

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