杉本会計事務所

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2021.08.31
Contributor:ポン太

ブロークン

チューリップの品種には、花びらに斑点やツートンカラーの複雑な模様が入ったものがあります。
これらの品種は「斑入り」や「ブロークン」と呼ばれていて、珍重されています。

かつて17世紀のオランダでは、チューリップの球根でバブル景気が引き起こされました。
球根1個に、一般市民の年収の何十倍もの価格がつけられたり、家一軒と取引されたりしたのです。
このチューリップバブルのなかで特に高値で取引されたものが「斑入り」や「ブロークン」です。


<当時高値で取引されていた縦縞模様のチューリップ>

ところがこの複雑な模様は、現在ではウイルスによって引き起こされる症状であることが知られています。
ウイルスは植物に感染すると、部分的に色素体に異常が生じて、モザイク状のまだら模様が生じます。
このモザイク模様が、複雑で美しいチューリップの花を作っているのです。

では、ウイルスに感染したチューリップは枯れてしまうことはないのでしょうか。
植物は長い長いウイルスとの戦いの中で、ウイルスを体内に取り込んでも枯れないという戦略を発達させました。
「ウイルスと共に生きる」という進化を遂げたのです。

ウイルスの立場に立ってみると、感染した植物が枯れてしまうと、ウイルス自身も死んでしまうことになります。
そのため、ウイルスは植物を殺しながら次々に感染していかなければならなくなるのです。
植物がウイルスの蔓延を防いでいれば、ウイルスは感染することができずに死滅していきます。
こうしてウイルスとの戦いを続ける中で、ついには、植物の体内で封じ込めができる程度の、弱いウイルスのみが生き残ることになったのです。

美しく気高い斑入りのチューリップの花色は、ウイルスと植物の長い戦いの末に作り出されたものです。
ウイルスと共存する道を選んだことによって、チューリップはそれまでにない新しい色を作り出しました。
そして、新しい価値を作り出したのです。

私たち人類も、長い歴史の中で常にウイルスと戦い続けてきました。
そして今、ウイルスとの戦いのさなかにあります。
一日も早い収束(終息)を願いつつ
私たちも、チューリップのように新しい世界を作ることはできるのでしょうか。

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