杉本会計事務所

代表コラム
DIRECTOR
COLUMN

2021.05.31
Contributor:motoki

役員報酬と内部留保のバランス

3月期クライアントの決算が固まり一区切りですが、巷間、K字経済(好調企業と低迷企業の二極化)と言われる状況は、中小企業においても見られます。

K字の右上ラインに入るのか、右下ラインに入るのか。中小企業においては、現状の事業の好不調が影響するのはもちろんですが、経営維持の観点から明暗を分けるのは、過去から積み上げた財務基盤(内部留保)があるか、ないか。

特に同族会社の場合、端的に言えば、会社の儲け=役員報酬+内部留保

すなわち、役員報酬と内部留保はトレード・オフ(一方を増やせば他方が減る)の関係にあり、これをどうバランスさせるかは、オーナー経営者の考え方に委ねられています。

一つは、会社を個人事業の延長線として捉え、事業規模を追わず、会社の儲けの相当部分を役員報酬等で個人(オーナー経営者)に帰属させ、借入金の返済以上の内部留保は持たない考え方。

もう一つは、会社を別個の事業主体と捉え、役員報酬を相対的に抑えて内部留保を確保し、その資金で設備や人材に投資を行い、企業としての成長を目指す考え方。

現在のK字経済において、業績悪化で右下のラインに入ってしまった場合、財務的な視点から経営の継続性が危ぶまれる可能性が高いのが前者、何とか踏み止まる可能性があるのが後者。

内部留保は一朝一夕には積み上がらないので、その厚みを増すには、後者の考え方を長期間継続して実践する必要があります。

正に、会社設立以降今日に至る経営者の事業や会社に対する考え方=会社の儲けを役員報酬と内部留保にどのように按分するか、そのバランス感覚と経営センスで決まると言えます。

ただし、内部留保が多ければいいという訳ではなく、経営者の中には、個人の資産形成が不十分な状況で、内部留保が高額ゆえに株価が上昇し、相続税対策で苦労するケースもあるので、この点も要検討です。

最後に厳しい見方を付け加えれば、そもそも会社の儲けが上がらなければ、役員報酬と内部留保のバランスを考える以前の問題として、事業経営の継続自体を検討する必要があるでしょう。

今後も経営環境の大きな変化、パンデミックや激甚災害等により、業績が急激に悪化する事態も起こり得る一方で、個人の寿命の方は長くなっています。

中小企業の多くを占める同族会社の経営者は、会社と個人の財務状況を総合的に俯瞰し、長期的な視点で、企業経営の舵取りを考えて頂きたいと思います。

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