杉本会計事務所

代表コラム
DIRECTOR
COLUMN

2019.03.31
Contributor:motoki

軽減税率よりもインボイス!

先週、半年後に迫る改正消費税制度について、研修会講師を担当させて頂きました。
受講者の皆さまは、今回の改正内容のうち、軽減税率制度については予備知識をお持ちでしたが、インボイス制度については、まだ先の話なので検討はこれからという状況でした。

巷間言われているところですが、このインボイス制度の導入こそ経済への影響が大きいと想定されますので、概略を整理したいと思います。

まず今回の消費税改正ですが、その要旨は次の3つになります。

・標準税率のアップ
・軽減税率の適用
・インボイス制度の導入

標準税率のアップは、消費税率が、2019年10月より、現行8%から10%に引き上げになるものです。事業者としては、経過措置も含めて、これまでの税率アップと同様の対応が必要となります。

軽減税率の適用は、2019年10月より、飲食料品と新聞のみについて、8%の税率が適用されるものです。事業者としては、売上と仕入等の両方について、標準税率(10%)と軽減税率(8%)の区分処理と実務対応が必要となります。

インボイス制度の導入は、2023年10月より、事業者の仕入税額控除の要件として、インボイス(適格請求書または適格簡易請求書)の保存が求められる制度となるものです。

このインボイス制度(適格請求書等保存方式)のポイントは3つ。

・インボイスがないと仕入税額控除ができない
・インボイスを発行できるのは税務署への登録事業者のみ
・登録事業者になれるのは課税事業者のみ

上記を要すると免税事業者はインボイスを発行できず、想定されるのは、免税事業者からの仕入等について、消費税の仕入税額控除の対象とならないことを理由に取引が回避され、免税事業者が排除される可能性です。

法人個人を含めた財務省推計(2015年)によれば、課税事業者310万者に対して、免税事業者は513万者。インボイス制度の導入による経済への影響が大きいとされる所以です。

免税事業者の対応方法としては、主として次の3つが考えられます。

・課税事業者(登録事業者)への移行(消費税納税及び実務対応の受入れ)
・免税事業者に留まる(主要顧客が消費者または免税事業者の場合)
・免税事業者に留まり値引等で対応(主要顧客が課税事業者の場合)

いずれにせよ、免税事業者にとってはマイナスの影響が想定されますが、インボイス制度は、これまで免税事業者に認められてきた「益税」(受領した消費税のうち納税されない税額)を解消し、課税の公平を確保するためのものとも言えます。

このインボイス制度の導入も、前回コラムで触れた、日本の課題である生産性向上のために必要とされる、企業規模拡大に相通ずる方向性なのかも知れません。

消費税改正については、コンビニのイートインとテイクアウトの税率は何%か、キャッシュレス支払いによるポイント付与はどうなるかなど、消費者目線の話題がどうしても多くなりがちですが、500万者以上の免税事業者の経営問題としてインボイス制度に着目し、十分に検討の上で対応して頂きたいと思います。

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